
6月23日、中国証券監督管理委員会(CSRC)のウェブサイトに、中国GPU設計企業の沐曦集積回路(上海)株式会社(以下、MetaX)の株式公開(IPO)および上場指導作業完了の報告書が公示された。指導機関は中国の有力証券会社の華泰聯合証券(Huatai Securities)だという。これは、MetaXのSTAR市場(科創板)へのIPOプロセスがまた一歩前進したことを示している。


2025年2月20日に中国杭州余杭景倉堯光科技合夥企業(有限合夥)が発表した「沐曦集積回路(上海)株式会社 2万2960株(総株主資本の0.2675%)」に関する公告によれば、同株式の譲渡価格は約2955万人民元(約6億円)だという。これに基づけばMetaXの現在の時価総額は約110.4億元(約2,229億円)と推算されている。
独自GPUアーキテクチャ、2024年売上高約13億元(約26億円)
情報によると、MetaXは2020年9月に設立され、ヘテロジニアスコンピューティング向けにフルスタックGPUチップおよびソリューションの提供に注力している。その応用分野は、インテリジェントコンピューティング、スマートシティ、クラウドコンピューティング、自動運転、デジタルツイン、メタバースなどを含んでいる。
MetaXの製品は完全独自開発のGPU IPを採用し、完全な自主知的財産権を持つ命令セットとアーキテクチャを有している。これに対し、中国国内の複数のGPUメーカーはImaginationのGPU IPライセンスを採用する。これにGPUエコシステムと互換性のあるソフトウェアスタック(MXMACA)を組み合わせることで、顧客にハードウェアとソフトウェアを一体化したコシステムソリューションを提供できるという。

2023年6月、MetaXは初のAI推論GPUアクセラレータカード「曦思N100」と、セキュリティ分野におけるそのソリューションを展示した。紹介によると、「曦思N100」はクラウドデータセンター向けのAI推論GPUアクセラレータカードで、ヘテロジニアスなGPU汎用プロセッサコア「MXN100」を内蔵し、HBM2E高帯域幅メモリを統合している。シングルカードのINT8整数演算の能力は160TOPS、FP16浮動小数点演算能力は80TFLOPSを達成し、高帯域幅・低遅延の特性を持っている。128チャネルと96チャネルのデコードをサポートする高精細ビデオ処理能力を備え、HEVC(H.265)、H.264、AV1、AVS2などの多様なビデオフォーマットに対応し、最大解像度8Kをサポートする。

2020年に発表したNVIDIA A100 GPU のINT8演算能力は624TOPS、FP16は312TFLOPS。つまり、MetaX の MXN100のAI演算能力はA100の約1/4に相当する。
それと同時に、曦思N100にはMetaX独自開発のMXMACAソフトウェアスタックが付属し、ハードウェアアーキテクチャと緊密に連携している。多種多様な主流フレームワークのネットワークモデルや、主流のコンピュータビジョン処理・マルチメディア処理フレームワークをサポートする。
「曦思N100」は2023年に量産を開始しており、スマートシティ、スマートセキュリティ、インテリジェント交通システム(ITS)、クラウドコンピューティング、インテリジェントビデオ処理などのシナリオに広く応用可能だ。
公式サイトの情報によると、AI推論向けのMXNシリーズGPU(曦思)に加え、MetaXはAIトレーニング、AI推論、汎用コンピューティング向けのMXCシリーズ(曦雲)汎用GPU(GPGPU)チップ、およびグラフィックスレンダリングアクセラレーション向けのMXGシリーズ(曦彩)GPUも持っている。

2023年8月、MetaXは、曦雲C500が北京智譜華章科技有限公司(智譜AI)の中英バイリンガル大規模対話言語モデル「ChatGLM2-6B」との適合を完了したと発表した。テストの結果は、曦雲C500が智譜AIのアップグレード版大規模モデルでの互換性を持ち、効率的に動作することを示した。
2025年2月20日に杭州余杭景倉堯光科技合夥企業(有限合夥)が発表した公告(前述)によると、MetaXの2023年の売上高は約1億元(約20億円)、赤字は8億元(約16億円)で、2024年の売上高は12億元(約24億円)、赤字は5億元(約10億円)だったという。

2025年2月、超訊通信(Super Telecom Co.,Ltd)が発表した公告によると、同社は2月の1ヶ月間で、MetaXの曦雲C500-P PCIeトレーニング・推論統合サーバーおよび関連ソフト/ハードウェアに基づく、Super Telecomは合計約15億元(約30億円)の大型受注を獲得した。
公開資料によると、2024年にMetaXが提出した特許出願は210件以上、120件以上の特許が認可され、そのうち発明の特許の割合は97%を超えている。
資金調達面では、MetaXは設立後1年以内に、エンジェルからシリーズAラウンドまでの4回の資金調達を完了し、調達額は数十億元に達したという。その後、さらに4回の資金調達を実施し、累計調達額は20億元(約40億円)を超えた。企業情報プラットフォーム「天眼查」によると、MetaXの最近の資金調達は2024年8月23日で、投資家には上海科創基金(Shanghai SciーTech Innovation Capital)、啓夏資本(Qixia Capital)、湖南国創産業投資などが含まれている。
地政学的リスクとサプライチェーンの課題
現在、AIチップ分野は米国による対中封鎖の重要一部となっている。2022年10月に対中半導体規制を導入して以降、米国は毎年規制を強化している。米国は欧米の先進AIチップの対中輸出を制限するだけでなく、中国が米国・日本・オランダの先進半導体製造装置を入手して先進プロセスチップを製造する能力も制限している。2023年10月には、米国は中国国産GPUメーカーの上海壁仞科技(バイレン・テクノロジー)と摩爾線程(Moore Threads)をエンティティ・リストに追加した。
特に今年に入ってからは、米国は対中半導体規制の新たな規則を頻繁に発出しており、その中には2025年1月に発表された中国向け半導体ウェハー受託製造(ファウンドリ)規制も含まれる。
この措置はMetaX、Moore Threads、バイレン・テクノロジーなど、多くの中国国産AI/GPUチップメーカーのチップ製造に影響を与えるだろう。しかし、中国国産の先進半導体製造装置がまだ全面的なブレークスルーを達成していない状況では、先進プロセスの製造能力は比較的限られている。特に、ファーウェイ(華為)やハイゴン(海光/hygon)のような、中国国産の先進プロセス製造能力を確保できる「AI大手」が存在する中で、MetaXなどの多くのスタートアップAI/GPUメーカーにとって、先進プロセス生産能力の獲得可能性は、将来の成長を左右する重要な要素となる。
(為替換算レート:1人民元=20円で計算)
(原文:https://www.icsmart.cn/93313/)

