
中国GPU大手「沐曦股份(MetaX)、上期純利益6.12億元で黒字転換に

2026年8月30日夜、中国の高性能GPU大手である沐曦集成電路(上海)股份有限公司(MetaX)は、2026年上期(1~6月)報告を発表した。科創板上場後初の半期報告となる。売上高、純利益ともに大幅に増加し、とりわけ親会社株主に帰属する純利益が過去最高水準で赤字から黒字へ転換したことから、同社が本格的な商用化・量産展開の収穫局面に入ったことを示す内容となった。
売上高44.67%増、純利益は赤字から黒字へ
半期報告によると、報告期間中の売上高は13.24億元(約314.58億円)で、前年同期の9.15億元(約217.40億円)から44.67%増加した。親会社株主に帰属する純利益は6.12億元(約145.41億円)となり、前年同期の1.86億元(約44.19億円)の赤字から黒字転換を果たした。非経常損益を控除した親会社株主に帰属する純利益はなお0.49億元(約11.64億円)の赤字だったものの、赤字幅は前年同期比75.83%縮小した。上期の売上総利益率は57.2%と、前年同期を1.1ポイント上回り、本業の収益力が着実に高まっていることを示した。
四半期ベースでみると、第2四半期の売上高は7.62億元(約181.05億円)だった。非経常損益控除後の親会社株主に帰属する純利益は0.54億元(約12.83億円)となり、単独四半期ベースで非経常要因を除いた黒字を初めて実現した。これは、同社が掲げる「技術―製品―市場」の商用化サイクルが実際に機能し始めたことを裏付ける内容だ。
上期の純利益が大きく増加し、黒字転換を実現した主因について、MetaXは主に2点を挙げた。第1に、GPU製品の出荷拡大が売上規模の増大につながったことだ。第2に、トレーディング目的の金融資産に係る公正価値変動益が非経常損益に大きく寄与したことだとしている。
GPU製品群を拡充 「曦雲C600」の量産が重要な節目に
報告期間中、MetaXの主力製品の競争力は引き続き強化された。新世代フラッグシップ製品「曦雲C600」は、上期中に計画通り量産出荷段階へ入った。同製品は、同社初となる中国国内製造プロセスに基づく高性能汎用GPUであり、チップ設計から製造、パッケージング、関連ソフトウエアスタックに至るまで、中国国内サプライチェーンによる完結を実現したとしている。
なかでも重要なのは、曦雲C600が2026年5月、中国信息安全測評中心および国家保密科技測評中心による「安全可靠測評(安全・信頼性評価)」において、最初の認証取得製品群の一つとなった点だ。現在の地政学環境の下で、この認証は単に製品の自主制御性を示すだけでなく、行政、金融、エネルギーなど重要情報インフラ分野へ参入するうえでの重要な資格要件になるとみられる。
また、MetaXは2026年1月、AI for Science(AI4S)向けGPU製品「曦索Xシリーズ」も発表した。曦索Xシリーズの初号製品は全精度混合演算能力を備え、科学計算で求められる精度要件の違いに対応できるという。AI4Sのイノベーション生態系を支援することを狙う。これにより同社は、AI学習・推論、グラフィックスレンダリング、科学インテリジェンスをカバーする総合的な製品ポートフォリオを構築したことになる。
高水準の研究開発投資を継続 技術的な参入障壁を強化
技術集約型企業であるMetaXは、報告期間中も高水準の研究開発投資を維持した。研究開発費は5.25億元(約124.74億円)で、前年同期比15.28%増加した。この規模は同期売上高の39.65%に相当し、自主技術開発を重視する姿勢を鮮明にしている。
報告期末時点で、研究開発チームは747人に拡大し、全従業員に占める比率は70.4%を超えた。このうち、修士課程以上の学位保有者は70.4%超に達した。高度な学術的背景を持つ専門人材が、GPUチップ設計やシステムソフトウエアといった複雑な技術課題を攻略するコア戦力となっている。
こうした高強度の研究開発投資と人材基盤の拡充により、同社は「GPU IP」「高速インターコネクト」「ソフトウエアスタック」という3つの中核技術障壁をさらに強化したとしている。
研究開発の進め方としては、「量産化世代、開発中世代、構想中世代を並行して進める」方針を堅持している。曦雲C600が量産出荷段階に入る一方で、第3世代の高性能汎用GPU開発プロジェクトもすでに始動した。同プロジェクトの総投資額は20.40億元(約484.70億円)を見込んでおり、単一チップ当たりのピーク演算性能、メモリー帯域、通信帯域の一段の向上を目指す。現時点では研究開発段階にある。
ソフトウエアエコシステム 自社開発とオープン戦略を並行
ソフトウエアエコシステムについて、MetaXは「自主開発」と「オープンかつ広範な互換性」を両立させる戦略を採っている。自社開発の「MXMACA」ソフトウエアスタックが、ハードウエアと上位アプリケーションをつなぐ中核となる。
GPU競争の焦点がソフトウエアエコシステムへとますます移るなか、MXMACAは国際的に主流となっているCUDAエコシステムに対し、高いネイティブ互換性を実現したという。これにより、CUDAベースで開発されたアプリケーションは極めて低コスト、場合によってはほぼゼロコストで沐曦のGPUプラットフォームへ移植できるとしている。これは顧客側の移行コストを大幅に下げるものであり、同社製品が市場に受け入れられる大きな要因となっている。現時点で同スタックは40種類超のAIフレームワークに対応し、500超のAIモデルと6,000超のCUDAアプリケーションの安定稼働を支えている。主流AIシナリオの95%超をカバーしているという。
MXMACAを基盤として、MetaXは新たに公開される大規模言語モデルへの「Day 0対応」も可能にしている。報告期間中、同社はDeepSeek-V4、騰訊混元、智譜GLM、MiniMax H3など30超の中国製大規模モデルへの初期対応を相次いで完了した。これにより企業顧客の検証期間を大きく短縮し、エコシステム対応の俊敏性を示したとしている。
同時に、同社はオープンソース戦略を積極的に進め、開発者コミュニティーの形成を後押ししている。海外ソフトウエアエコシステムによる長期的な寡占構造を打破する可能性があるとみている。2025年2月にMXMACAを正式にオープンソース化して以降、報告期末までにコミュニティーの開発者ユーザー数は50万人を超えた。500点超のシステムレベル開発文書および技術マニュアルを公開し、龍蜥社区、vLLM、PyTorch Foundationなど10の主要オープンソースコミュニティーと深い連携関係を構築した。OS、推論エンジンなどを含むフルスタックのエコシステム形成を共同で進めている。
人材育成面では、MXMACAはすでに中国のC9大学すべてをカバーしており、国産演算インフラエコシステムを担う開発者層の育成を川上段階から進めている。
「1+6+X」戦略を推進 商用展開を加速
報告期間中、MetaXは「1+6+X」産業エコシステム戦略を引き続き推進した。これは、演算基盤を固めたうえで、金融、医療、エネルギーなど6大業種を深掘りし、さらにエンボディドAIや宇宙演算インフラなど先端分野も開拓する構想だ。
演算インフラ分野では、同社製品はすでに北京、上海、杭州、長沙、香港など複数地域のAI計算センターにおいて大規模導入されている。報告期間中、MetaXは雲工場科技と共同で、無錫における国産GPUエコイノベーションセンターおよび大規模演算クラスターの整備を進めた。また、上海聯通と戦略協力協定を締結し、通信事業者の算力ネットワーク分野への展開も一段と進めた。
とりわけ注目されるのは、7月24日に沐曦GPUチップを搭載した「雲尖沐曦号」インテリジェント計算衛星が軌道投入に成功した点だ。中国国産GPUの軌道上信頼性検証を進めるものであり、中国国産インテリジェント計算産業チェーンが宇宙応用へ踏み出すうえで重要な一歩と位置付けられる。
「戦略的赤字」から「規模収益化」への転換点に
MetaXの2026年上期報告における最大の注目点は、「戦略的赤字」の段階から「規模収益化」の段階へと歴史的な転換を果たしたことにある。報告期間中、親会社株主に帰属する純利益は6.12億元(約145.41億円)となり、正式に黒字転換を宣言する内容となった。第2四半期単独でも、非経常損益控除後ベースで黒字を達成している。
これは単に損益計算書上の数値が赤字から黒字へ転じたというだけではない。会社の成長段階そのものに根本的な変化が生じたことを意味する。すなわち、MetaXの「技術―製品―市場」という商用化の閉ループが機能し、本業による実質的なキャッシュ創出力が形成され始めたことを示す。従来の高水準な研究開発投資も、いよいよ回収局面に入りつつあるとみられる。この流れが持続すれば、中長期の企業価値評価にとっても、より確かな業績面の裏付けになる可能性が高い。
世界的にAI演算需要が急拡大するなか、MetaXは深い技術蓄積、整備が進む製品生態系、明確な商用化戦略を武器に、中国の高性能GPU大手としての市場地位を着実に固めつつある。加えて、同社はすでにH株上場に向けた手続きも開始しており、今後の国際展開を後押しする可能性がある。
(為替換算レート:1人民元=23.76円で計算)
(原文:https://www.icsmart.cn/141443/)

